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Posted by naturum at

2011年01月19日

お題 Part2



本日もお越し頂きありがとうございます






先週出されたお題の第二弾です

一行の書き出しから始まるイマジネーションの世界

同じ一行から始まる文章でも、書き手によって千差万別

それこそ人の数だけ文章が出来上がる

とても面白いネタ提供、ありがとうございます

前回は〝実話〟というオチでしたが

今回は完全なフィクションであり

全くの想像の世界です


※追記(念を押しときますよ!ふぃくしよん です!)


駄文ですが・・・

ではどうぞ






<暗夜行路>


「何気なく水面を眺めていると黒い影がスゥと泳ぐのが見えた」

力強く早い流れを二つに分断しているあの大岩のすぐ下側

そこだけが流れが緩やかになり反転流を形作っている

一瞬見えた黒い影が、水面から消えようとするその瞬間

ハート型を横にしたような尾鰭がパシャッと水面を叩いたように見えた

ん?気のせいか?

いや、気のせいではない

あの水面の盛り上がり、今尚残る波紋、そして余韻

明らかに大型の魚が今そこに居たことを物語っている

それもゆうに三尺を超えている

あの大岩が遠目に見て約3mくらいはあるだろうか

その半分とまでは言わないものの

それに近いくらいの黒い影

ということは四尺を超えていることになる

そんな大きな淡水魚類が

この河川に生息しているのか

自分でも信じられない気がするが

今この目で確かにそれを見たのも事実だ







すぐさま車に戻り、積んであった竿を手に握り

あの大岩に向かって歩みかけたその足をフッと止めた

こんな竿を持ち出して、一体どうしようというのだ

あまりにも貧弱過ぎる・・・

仮に運良く掛かったとして

どう考えてもランディングにまで耐えられないのは

一目瞭然である

信じがたいほどの大物を眼の前にして

何も出来ないでいる自分に歯痒さを覚えたものの

踏みとどまったことに少し納得している自分もいる

ただ闇雲に投じればよいというものではない

それ相応の準備をし、それなりに闘えるだけの経験を積んだ上で

初めて立ち向かうということで

相手に対しての敬意を表すことにもなる

なぜかその時、そんなことが頭をよぎった







偶然通りかかった山沿いのあの大岩のある場所

美しい清流を眺め、仕事の疲れを癒そうと川原に降り立ち

偶然にも奴を見かけたのは

今からもう3年も前のことだ

それなりに経験も積んだ

奴と向き合っても決して負けない強い竿も手に入れた

もうそろそろいいだろう?

私は自問自答し、奴に挑む決意をした

あれから3年の間に、私は幾度と無くあの川に足を運んだ

だが、それはあの区間を除いての話だ

あの大岩を中心に、上下300mの区間は

まったく手付かずの状態だ







この3年の間に、私以外の誰かが攻略してしまったかもしれない

もしそうなら、悔しい気もするが、それはそれでしょうがない

だが、見たところ人が立ち入った形跡は無い

足元の泥濘には、無数の足跡が残るが

それは人間のそれではなく、獣の類のものだ

二本の爪跡から想像するに鹿か猪だろう

そういえば辺りの藪には何者かの獣の体毛が引っ掛かり

糞の臭いなのか、あるいは体臭なのか

辺り中に獣の臭いが充満しているような気がした

私は、水の中にいる奴と闘うだけでなく

この何者か分からない獣がいつ飛び出してくるか分からない

その恐怖とも同時に闘わなければならないようだ

覚悟はいいか?

万全の態勢とまではいかないまでも、そこに立ち向かう気力は漲っている

念の為、小型のナイフを携帯する

いざとなったら、こんなものは気休めにもならないのは分かっているが

丸腰に比べれば、安心感は段違いである

刃渡り15cmにも満たないこのナイフに保険を掛けた気分でもある







夕闇がもうそこまで迫っている時間

Vの字に空を切り取ったような山の稜線の向こうは

まだ茜色の空をしているが

鬱蒼とした木々に囲まれたこの辺りは

もう間もなく漆黒の闇に包まれる

先程まで飛び回っていた鳥達は

迫り来る闇から逃げるように寝床に帰っていき、チチッとも啼かない

聞こえてくるのは、あの大岩を削り取らんばかりに流れる水の轟音と

昼間はどこに居たのかと思うほどの虫の音だけである








今すぐにでも竿を振りたい気持ちをぐっと押さえ

辺り一面が完全に闇に溶けてしまう前に

出来る限りの情報をその場所から読み取ることにした

対岸の岩壁からせり出したボサ、引っ掛かった倒木、

流芯の奥に出来た反転流、大岩の下の澱み

二つに分断された流れが再び交わる場所

そして、今自分が立っている場所とそれぞれの位置関係

出来る限り多くの情報を脳内にインプットしておく







天を仰ぎ、大きくひとつ息を吸い込んだ

さあ! 勝負だッ!

自分を奮い立たせる為に、あえて口に出してみた

暗い闇の、さらに深い闇の奥に向かって

真剣を振る思いで竿を振り抜いた

ヒュンッ

軽い音がこだまし








私の心を乗せた分身は、吸い込まれるように

闇の奥底に消えていった





  

Posted by simesaba at 17:39Comments(10)フィクション