2010年11月16日
興醒めなもの
本日もお越し頂きありがとうございます。
天候不順が叫ばれて久しいが
今年のそれは例年に無くおかしい
思えば春先からしてその兆候は現れていた
4月の後半でも真冬並みの寒波が訪れたり
そして真夏の激しい酷暑
それが終わったと思えば
秋を通り越していきなり冬になったかのような冷え込み
今思い返してみると
春からずっとおかしな天候は続いていた
ここ日本という国は
四季のうつろいがあるからこそ
繊細な感覚や言い回しも育まれてきた
と言っても過言ではない
私は他の言語に長けているわけではないが
日本語は他の言語に比べて
四季折々に自然が見せる変化を
実に絶妙な言い回しで表現できる
数少ない言語だと思っている
例えば緑色のひとつに〝もえぎいろ〟というのがある
漢字にすると 〝萌黄色〟〝萌葱色〟
発音は同じ MOEGI - IRO だが
意味は全く異なる
〝萌黄色〟は芽吹いたばかりの草木の色
〝萌葱色〟はネギの芽の色
他にも微妙な違いのピンクを表現する色にも
桜色、珊瑚色、薄紅梅、曙色、撫子色・・・etc
古代の人々が詠んだ句や歌の中には
四季の微妙な変化を細やかに感じ取り
些細なことにも趣を感じ
それを他の人にも同じように感じてもらえるよう
言葉を選び、駆使して表現してきた
そんな言葉が溢れており
それが現代に生きる我々にも脈々と受け継がれてきた
大袈裟な言い方をすると
日本人のDNAには
そんな太古からの感覚が刷り込まれていて
四季の変化を欲する気持ちが
心の奥底にあるのかもしれない
それが、本能的に天候のズレを感じ
違和感を覚えるのかもしれない
特に今年などは〝四季〟ではなく
夏と冬の〝二季〟しかない
といってもいいくらいに極端だ
まるで熱帯雨林気候の〝雨季と乾季〟のようだ
温暖化が進み
ここ日本でも近年はスコールのような
局地的な集中豪雨が降ることもある
そんな事柄からも
熱帯化しつつあるようにも感じる
日本の四季を形容した随筆
清少納言 『枕草子』
四季それぞれに趣のある瞬間を捉え表現している
春はあけぼの やう/\しろくなりゆく山ぎは すこしあかりて
むらさきだちたる雲のほそくたなびきたる
夏はよる 月の比はさらなり やみも猶ほたるとびちがひたる
雨などふるさへをかし
秋は夕暮 夕日花やかにさして山ぎはいとちかくなりたるに からすのねどころへ行くとて
みつよつふたつなど とびゆくさへあはれなり まして雁などのつらねたるが
いとちひさくみゆる いとをかし 日いりはてて、風の音 虫の音など
冬はつとめて 雪のふりたるはいふべきにもあらず
霜などのいとしろく 又さらでもいとさむきに 火などいそぎおこして
すみもてわたるも いとつきくし ひるになりて ぬるくゆるびもて行けば
すびつ 火をけの火も しろきはいがちになりぬるはわろし
むらさきだちたる雲のほそくたなびきたる
夏はよる 月の比はさらなり やみも猶ほたるとびちがひたる
雨などふるさへをかし
秋は夕暮 夕日花やかにさして山ぎはいとちかくなりたるに からすのねどころへ行くとて
みつよつふたつなど とびゆくさへあはれなり まして雁などのつらねたるが
いとちひさくみゆる いとをかし 日いりはてて、風の音 虫の音など
冬はつとめて 雪のふりたるはいふべきにもあらず
霜などのいとしろく 又さらでもいとさむきに 火などいそぎおこして
すみもてわたるも いとつきくし ひるになりて ぬるくゆるびもて行けば
すびつ 火をけの火も しろきはいがちになりぬるはわろし
日本から春と秋の二つの季節が無くなってしまうと
いったいどうなるのか?
夏は夜・・・
冬はつとめて(早朝)・・・
で? それがどうしたん?
となるのは必定
春や秋があるからこそ
いとをかし であり あはれなり である
日本人は古来より
春は桜を、秋は紅葉を目で楽しみ
春は筍、秋はまつたけなどを舌で味わい
過ごしやすい季節に
自然を観察して生きてきた
この二つの季節は
次の季節へとゆっくり変化していく中で
気温の違い、色の違い、草花の違い
匂いの違い、味の違いなど
様々な変化を見せてくれる
春と秋のない日本は、それこそ興醒めである
2010年11月16日
Have a break !
( BGM Time to say goodbye by Sarah Brightman )
ちょっと一息
気だるい朝
こんな曲でも聴きながら
まったりとした時間を過ごしていたい
Posted by simesaba at
10:52
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