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Posted by naturum at

2009年12月01日

私の中の白鯨




(本文と画像は関係ありません)


今日はシリアスモードです
いつもの おちゃらけ ではありません
しかも長文です
覚悟してお読み下さい


先日の記事で、
最後の一投がズルズル1時間半にも及んだ件を書きましたが、
それには一応ちゃんとした理由(原因)が、実はあるんです。




最後の一投でデカバスがくるかも・・・が実際にあったんです



その日は昼からの釣行で、小バスを数匹釣り、

暗くなってから40UPのそこそこの奴を1本

それなりに楽しめたので、そろそろ帰ろうかな

と、その前に今日は1回も投げてないポイントにちょっと投げて

それから帰ろうと思い、5インチセンコーノーシンカーを投じる

コツン!

小さなアタリがあるが結局乗らず

さあ、次を最後にしようと心に決め、同じポイントにキャスト

しばらくステイさせた後

軽く誘いを入れラインスラッグを取ろうとした



その時



急にものすごい勢いでラインが走り出す

ゆっくりした走り出しではなく

一瞬にしてラインスラッグが無くなりテンションがかかる

それと同時に激しい音をさせながらスプールが回転し糸が出て行く

いつもなら魚の重みを感じてからアワセを入れるところだが

そんな余裕は全く無い

アワセを入れるというよりも

竿を立てなければ、そのまま竿ごと持って行かれそうな勢い

それが自ずと向うアワセの形になった

なんとか竿を立てはしたものの、ラインが走り出した瞬間から

ドラグは鳴りっぱなし

決してドラグをユルユルに設定していたわけではない

その証拠に竿はありえないほどにバット部分から曲がっている

もっとドラグを締めたいのだが、両手で竿を支えていないと

本当に竿を持っていかれそうになる

このまま走られたら、いつかラインが出切ってしまう

なんとか体勢を立て直したい

両手で持っていた竿のグリップエンドを腰のベルトの辺りに当て

少し腰を落として、足を開く

まるでTVで見たことのあるカジキ釣りの

ファイティングチェアーに座っているような姿勢

右手はフロントグリップより更に先のバット部分にあてがい

左手でドラグを慎重に締め直す

ガチガチに締めてしまうと、ラインブレイクか

竿が折れるかのどちらかしかないように思えた

10時から11時の角度で支えている竿が

時折9時、8時の角度まで絞り込まれる

そんなやり取りを幾度と無く繰り返す



ドラグの音が鳴りっぱなしだったのが

やがて断続的な音に変わる

ドラグを締め直したのが功を奏したのか

それともウィードに潜られたのか

ピタッと止まってしまった

いや、完全に止まったわけではない

少しずつだがドラグは ギチッ ギチッ と鳴っている

勢いを殺されても尚、奴はパワーゲームに持ち込もうとしているようだ



だが、ようやく急展開からは一段落し、脳に考える余裕を与えた

辺りを見渡す

この場所で取り込めるのか?

まだまだランディングには程遠いが、足場は水面から約1m

この位置ではハンドランディングはかなり厳しい

抜き上げることなどまず無理だ

よし!足場のいい位置まで移動しよう

そこは桟橋に降りるスロープの途中

桟橋まで降りれば、水面までは約30cm

あそこならランディング出来る

が、問題は桟橋から天空に向かってそびえる太い柱

どうやってあの柱を超えるか・・・

しょうがない、一旦柱を抱くようにし向こう側に移動することに決めた

柱を抱く瞬間、一瞬だが片手で竿を持つことになる

この瞬間に再び走り出したら、と思うと動くに動けない

奴が休んでいる今しかタイミングは無いはずだ

意を決して、一、二の三 ソレッ!

ラインのテンションを保ちながら

なんとか移動することに成功した




足場のいい場所に陣取り、勇気百倍

さあ来い!!

と意気込んではみたものの、依然として奴は大きな動きをみせない

どうやら奴は底にへばりついて、こちらが諦めるのを待っているようだ

こちらとて、ただ単に奴を休ませているわけではない

常にラインテンションは張りっぱなし、

引っ張り合いをし続けているのだ




一体どれぐらいの時間が経過したのか

少なくとも10分以上はかかっている

いい加減竿を持つ手にも疲れを感じてきた

だが、ここで諦めるわけにはいかない

私が疲れを感じ始めているということは

奴も疲れているに違いない

そう思い竿先を見ると

ゆっくり上下に動いているではないか

そう、それは奴の息づかいそのものだった

大きく呼吸をしているのがラインを通じて

竿先まで伝わってきているのだ

間違いなく奴は疲れた体を休めているのだ

こうなったら我慢比べだ

とことん勝負してやるぞ!と更に意気込む




長期戦の覚悟が決まれば心にゆとりができてきた

周りの景色を眺める余裕さえある

昼間、あれほどたくさんのアングラーがいたことが嘘のように

辺りは静まり返っている

時折、湖岸に面した道を車が行き交う

今ここで釣りをしていて、超大物と勝負をしているなど

誰も思わないだろう

車が通り過ぎると、また暗闇だけの世界が戻ってくる

一見何も起きていないかのような静寂

だが間違いなく奴はこの糸の先にいて

どうにか逃れようと機を伺っている

この状態が続くこと更に約20分





その間に、私は電話を3回掛けている

私をバス釣りの虜にさせた友人であり、後輩であり、釣りの師匠である

あの青年に

こんな時、彼ならどうするか

それを尋ねたかったからだ

残念ながら電話は一度も繋がらず

結局は自分一人で解決するしか無いようだ





このままでは埒が明かない

展開を打開しよう!

今まで張り続けるだけだった糸を少し緩めてみた

すると緩めた分だけ入っていき、また止まった

そしてまた動かなくなった

ポンピングで少しあおると、首を振っているような反応が返ってくる

が、そこから動く気配は全く無い


よし!こうなったらラインブレイク覚悟で強引にいくか!

根掛かりをはずす時のように

竿と糸を一直線にし引っ張ってみる

それでも動かない




最後の手段

自分でラインを切るか

ダメもとで糸を手繰り寄せるか

後者を選んだ

手にハンカチを巻きつけ、少しずつラインを手繰る












10cm・・・動かない





















20cm・・・まだ動かない



























30cm・・・これでもかァ!





























4・・・




















































気が付くと、私はその場にへたりこんでいた

張り詰めていた緊張の糸が一気に解けた



































ラインが切れると共に・・・
































しばらくその場にへたりこんだまま
放心状態























そりゃあそうだ

あんな強烈な引きを味わったのは生まれて初めて

今まで釣ってきた40後半~50前半のバスの引きとは

明らかに違っていた




そういや師匠が言ってたな

ロクマル以上のバスの引きは別格だ



その意味が今日分かった

そして、まだまだロクマルなんて釣らせて貰えないんだな、と

腕前も、経験も、タックルも、どれをとっても

皆が憧れるロクマルを釣るには程遠いことを

改めて認識させられた、そんな出来事だった




だが、そんな大物と渡り合えたこと

それだけでも大きな収穫になった

あの引きを経験したことで

ある程度のサイズのバスとは

今のタックルでも十分やれることが分かった

それ以上を狙うのであれば

それ以上のタックルが必要なことも分かった




釣り上げることはできなかったものの

貴重な経験をさせてもらったと思っている

そしていつかきっと

奴を仕留めてみせる

そう心に誓った



それ以来、奴は私の中で〝白鯨〟になった

私はエイハブ船長で奴はモーヴィディック




もしかしたら、あの場所にはもういないかもしれない

もしかしたら、別の誰かに釣られてしまったかもしれない

だが、できることならもう一度

もう一度、奴と勝負がしてみたい

そう願わずにはいられない




あの日以来、幾度となく同じ場所に通っている

だが、まだ奴は姿を現したことはない

もしかしたらもう二度と会えないかもしれない

それでも通わずにはいられないのだ





これが男の、いや、釣師のロマンだから







そして今日もまた、見果てぬ夢を追いかけて

奴を釣り上げる日を

心待ちにしている






いつかきっと






いつかきっと








今この文章を書きながら

あの日の、あの緊張感を思い出し

手が震えている自分がいる


最後までお読み頂きありがとうございました
  

Posted by simesaba at 17:56Comments(2)